考えをまとめて行動に移したり、旧来の問題を解決する新たな方法を考えたり、リリース予定の製品にぴったりの大胆な名前を検討したり、さまざまなテーマや背景に対応できる強力なツールがブレインストーミングです。どんな業界でも使え、効果的なコラボレーションの実現に役立ちます。
こんな状況を考えてみましょう。チームでの熱気あふれるブレインストーミングセッションが終わり、大量の付箋が残りました。思いつく限りあらゆる解決策を探ったことでしょう。ただ、本当の作業が始まるのはブレインストーミングの終了後なのです。グループで出し合ったコンセプトのほとんどが実現しそうもないことに気が付き、一体どの案を先に進めればよいか、途方にくれてしまうことにもなりかねません。
ブレストで本当に重要なのは、メンバーが集まって話し合うことそのものよりも、終わった後に次のステップとして何をすべきかです。ブレストの内容を現実的なアイデアへと変えるためのコツを説明します。
アイデアをランク・優先順位付けし、分類する方法をチーム全員で決める
ブレインストーミング後にアクションアイテムの担当を決める前には、時間をとってアイデアを整理するベストな方法を決める必要があります。メンバー全員のアイデアにランクや優先順位を付け、分類する際は、決定の結果が収益面にどのような影響を及ぼすかについて検討しましょう。
例えば、アイデアの実現に必要なリソース、成功させるまでに必要となる開発の規模、実現までにかかる調査やテストの期間、珍しいコン セプトの場合に多額の広告予算が発売時に必要となるかどうか、などを検討していきます。
加えて、リスクについても考慮が必要です。チームで新製品やサービスのアイデアをブレインストーミングする場合であれば、各コンセプトについて、テクノロジー、サプライチェーンや製造面での変更の有無やそうした変更のリスクを取るに値するかどうかなど、簡単に分析してみましょう。
ブレインストーミングを勝ち残ったアイデアであっても、コスト面で問題があれば実現は不可能です。プロジェクトの予算規模、コンセプト段階から製造段階に移る際の経営陣からの追加承認の要・不要、株主からの早期の収益化への期待の有無なども検討しておきます。
さらに、ブレインストーミングの結果を実現可能なアイデアに変えるには、価値という視点も大切です。リソース、リスクとコストを検討する際には、選択肢を互いに比較してメリットの有無を考えますが、価値はより主観的なものです。そのアイデアが業界全体を変革するようなものか、人々の暮らしを変えるようなものかなどといった問いかけをしてみま しょう。
例えば、ワクチンをいち早く市場に投入する過程では、社会的価値が非常に大きいテーマのため、適切な解決策の価値によってリソース、リスクやコストといった制限が決まってきます。
こうした基準や他の条件でランク付け、優先順位付け、分類の方法を決めることで、メンバー全員がそれぞれの専門知識を出し合い、独自の見方を提案できるようになり、チームのコンセンサスが得やすくなります。
参加者にアイデアの根拠や背景を説明してもらう
アイデア出しの段階では、ブレインストーミングに参加する全員が熱心にコンセプトや改善策を出し合います。グループに分かれてアイデアをまとめる前に、特に生産性の高いメンバーが自信のあるアイデアをいくつも押し出してくることも多いでしょう。対象となる問題から受ける影響が大きいメンバーや、役職上解決策を見出す責任があると感じているメンバーがセッションに参加する場合に、こうした傾向が強くなります。
ブレインストーミングが終わったら、参加者一人ひとりに自分のアイデアを大まかに説明してもらうようにしましょう。現在の課題や状況に加え、提案したコンセプトや解決策がその修正や改善にどう役立つかをを説明してもらい、将来的にどのような状態が望ましいかを提示してもらいます。
自分のアイデアを説明する際には、提案する内容が会社の地位や現在の市場シェアの改善にどう寄与するかを一人ひとりに説明してもらいます。
ここでもコンセンサスを重視し、どのアイデアに最も関心や注意が集まっているかに気を配りましょう。発表者に質問をし、必 要に応じて反対意見を述べてもらいます。
参加者全員の説明が終わったら、ホワイトボードにアイデアを書き出すか、付箋に書いて壁に貼ります (もちろん、Lucidspark などのオンラインホワイトボードでも可)。似ているアイデア同士は近くにまとめます。
ブレインストーミングしたアイデアを整理する
ブレインストーミングが終わり、アイデアのランク付け、優先順位付け、分類も済んだら、関心や注意を引くものを中心に、残りのアイデアをグループ化していきます。
真っ先に注意を惹くようなアイデアはどれか、または即戦力となりそうなもの、検証が必要なもの、論外のものなどとアイデアを仕分けていきます。
ここまでで、参加者の説明の際にグループ化したものなど、関連のありそうなアイデアもいくつか見えてきたと思います。こうしたアイデアの類似点に注目すると、そうした類似点がお互いを補完しあうような例も見えてきます。似たコンセプトの優れた点を組み合わせることで、革新的な解決策につながる可能性もあります。
この時点で、熱狂的な支持、まあまあ人気、ほぼ無反応など、アイデアの反響に基づきチームで整理を始めます。具体的なアクションプランを決める段階ではないので、特定のアイデアにあまりこだわり過ぎず、仕分けと整理に集中しましょう。
続いて、反響度に基づいてアイデアを配置し、マトリックスまたはグリッドを作ります。
整理の過程では、最初のブレインストーミングセッションの基準に基づいてアイデアを評価することも大切です。解決したい問題や懸念がどんなものだったか振り返り、一つ一つの解決策がどの程度対応しているかを判断してブレインストーミングの内容を実行可能なアイデアへと変えていきます。
熱狂的な支持、まあまあ人気、ほぼ無反応といった要素に加え、この前の段階でランク・優先順位付けや分類に使ったリソース、リスク、コスト、価値などの基準も合わせて見ていきます。
こうした要素は、マトリックスやグリッドと併用するチェックリストでも活用できます。人気のアイデアも、コストやリスクの点で及第点に達しなければ現実的でなく思えてきますし、あまり反応のなかったアイデアも、価値の点で優れているとなれば評価が高まる可能性もあります。
アイデアに投票して決定を下す
この段階まで来れば、精査を経てチームのアイデアが整理され、合理化され、最も現実的で実現可能性が高いアイデア、コストが高すぎるアイデア、現在の予算やスケジュールでは無理なアイデアなど、全員がある程度把握できていることと思います。
検討がスムーズに進めば、成功につながるアイデアがどれか、目星がついているかもしれません。
このタイミングで、グループとしての意思決定を固め、投票で組織にとって最適なコンセプトを決めるのがよいでしょう。投票の際には以下の点に注意するようにします。
- 最も人気のアイデアとまあまあ人気の間に共通するパターンは存在するか?
- 評価を急ぎすぎて「無関心」のカテゴリーに追いやられたアイデアはないか?
- アイデア選定の際に重要な基準 (締め切りまでに発売など) を忘れていないか?
投票対象となる選択肢をもう一度見直してみましょう。ひとつのアイデアに投入できる社の予算、リソースや人員に限りがある場合には、単に気に入った選択肢に投票するのではなく、残りのアイデアにつき、最も好ましいものが1番、次に好ましいのが2番、というように順番を付けてみるのがおすすめです。こうすることで、全員の意見を反映しながら上位2位のアイデアを選ぶことができます。
いくつかの選択肢よりも、2つの選択肢から選ぶ方がずっと簡単です。効果的なブレインストーミングの産物である残りのアイデアは、後で再検討できるよう保存しておきましょう。
最終投票に移る前に、感情や個人的な先入観はできるだけ排するようメンバーに伝えます。投票を誤った方向にねじ曲げかねない偏見や外部からの影響を事前に特定できればなおよいでしょう。最終的な目標は、ブレインストーミングの結果を実現可能なアイデアに変えることです。