お化け屋敷に行ったことがある方なら、その完成度の高さに気づかれたことがあるでしょう。お化け屋敷の設計者は、客が怖がるような状況を作り出す方法を熟知しているので、恐怖を最大化して派手なリアクションを引き出すことができるのです。完璧なアトラクションに仕上げるには、まる一年をかけた調整が必要となることもあります。設計者はフロアプランを繰り返し見直し、新しい地図を試し、過去のしかけを改善して、昨年よりももっと怖いお化け屋敷を作り出すのです。
ユーザーストーリーマップの作成もある意味、このお化け屋敷の設計に似ていて、最高のユーザーエクスペリエンスを生み出すには、計算しつくした決定、膨大な調査とユーザーへの共感が必要となります。未完了の作業をルーティンで淡々とこなしていくだけでは、ユーザーの満足度を最大化することはできないのです。
この記事では、ユーザーストーリーマッピングの詳細と、スムーズな製品開発にマップを活用する方法を紹介します。
ユーザーストーリーマッピングとは?
まずは「ユーザーストーリー」とは何かについて考えていきましょう。例えば、ナビアプリを操作してカフェを探す場合。まずマップを開き、現在位置を設定して「カフェ」と入力した後、「検索」ボタンをクリックして行きたいカフェを選択します。すると、ナビアプリがそのカフェまで案内してくれます。ユーザーストーリーとは、このアプリを開いてから目的地に到着するプロセス全体を指すもので、ある製品との顧客のやり取りを示します。
したがって、「ユーザーストーリーマップ」とは、このストーリーを記録したものであり、ユーザーと対象製品とのやり取りをステップ別に分解した図です。アジャイル開発では、カスタマーエクスペリエンス改善のために機能を構築・改善する余地がある場所を特定する場合によく使われます。

ストーリーマッピングを使用する理由
ここまでの説明で、ユーザーストーリーマップを作成するメリットはだいたい分かったと思います。つまり、ユーザーエクスペリエンスに完全に焦点を当てた製品を開発するということですが、メリットは他にもいくつかあります。
- 優先すべき対象が明確になる。
バックログ項目の優先順位付けは難しく、簡単なものから着手すべきか、コストが最も低いものから始めるべきかなど、思案のしどころとなります。最終的には、最も高い価値を実現できる項目こそがカスタマーエクスペリエンスの改善に最も大きく貢献します。顧客が何を重視するかを把握することで、顧客へのインパクトの大小の順にバックログ項目の優先順位を付けることができます。 - 正しい要件を判断するのに役立つ。
要件の制約がなければ、バックログ項目はまたたく間に膨れ上がります。ストーリーマッ ピングを導入することで、製品要件に適した規模を見極め、大規模なプロジェクトをチームに適した規模に分割することができます。 - 方向性を示す指標となる。
開発チームの Carl はこれまで、ストア内のすべての製品に 3D ビューを実装すべきと主張してきました。なかなかの名案ですが、顧客のユーザーストーリーを組み立ててみたところ、顧客の大半はその製品をモバイルデバイスで使用していることが判明しました。遅延読み込みを使った場合でも、3D ビューの表示には読み込み時間がかかります。Carl にユーザーストーリーマップを見せたところ、3D ビューへの優先対応がユーザーの満足度向上にそぐわないことを認識してくれました。ユーザーマップを中立的な媒体として使うことで、意見の不一致を解消し、チームの方向性を定めることができます。 - 依存関係を浮き彫りにできる。
対象ユーザーが主に iPhone ユーザーで、オンライン決済を多用するようであれば、Apple Pay の実装が最優先事項となるでしょう。ただ、そのアプリがまだ App Store でダウンロードできない段階であれば、Apple Pay を組み込む前に Apple 経由でのデプロイが必要となるはずです。ユーザーストーリーをマップ化することで、依存関係を見分け、機能開発の前に対応すべき事項を判別できるようになります。
ユーザーストーリーマップの作成に関係するメンバーは?
ユーザーストーリーマップの作成に誰が参加すべきかは、対象となる製品とその作成に関わるメンバーによって異なります。例えば、バンキング API の開発中であれば、マップの作成に人事チームが 参加する必要はないでしょう。通常であれば、以下のようなメンバーやチームに参加してもらってマップを作成することが多くなります。
- UX/UI
- プロダクトマネージャー
- セールスチーム
- マーケティング
- カスタマーサービス/カスタマーサポートチーム
- エンジニアリングチーム
- IT
- 法務部
- 財務チーム
ユーザーストーリーマップを作成する方法
ユーザーストーリーマップの作成が初めての場合でも、ご心配なく。Lucidspark を使えば、ユーザーストーリーの立て方や作成したストーリーの追跡方法を知らなくとも、以下の質問に答えて、テンプレートに従うだけでユーザーストーリーマップに含めるべき内容が分かります。
1. 解決したい問題は?
顧客が現在抱えていて、製品で解決しようとしている課題を挙げます。例えば、マネー管理アプリを構築しようとしている場合であれば、顧客の抱えている課題は「家計の管理強化」ということになります。カロリー計算アプリの場合には、「ダイエット目標に向けた体重管理」ということになるでしょう。
2. ユーザー像は?
ユーザーの気持ちになりきるためには、まずユーザー像を突き止める必要があります。ユーザーによって目標は異なり、製品とのやり取りの方法もまた異なります。
3. ユーザーが通常、製品とやり取りする方法は?
各ユーザーが実行する一般的なアクティビティを記録していきます。一般的なテーマから次のステップでのより細かいストーリーへと展開していきます。アパレルの再販ウェブ サイトを構築する場合であれば、ユーザーはまずアプリを開き、販売したい商品をストアに読み込み、商品の説明を入力するでしょう。
4. 顧客が実行する具体的なアクティビティは?
上述のテーマをより具体的なユーザーストーリーに分解していきます。すべての顧客が販売する商品をストアに読み込むとしたら、ストーリーの内容は「商品に複数の写真を追加したい」、「商品の説明を編集できるようにしたい」といったものになるでしょう。
詳細なストーリーを描き出すことで、ユーザーにとって最も重要度の高いストーリーを識別して優先できるようになり、ユーザーにとって最もメリットの大きいアクションを特定できるようになります。
ユーザーストーリーマップの課題 (と、それを克服する方法)
1.マップが概略的すぎる/仔細にすぎる。
マップはあまり作り込みすぎず、中庸を目指すようにしましょう。チームメンバーが途方にくれてしまうような場合には、内容が細かすぎる可能性があります。煩雑にならないよう、シンプルな表現を使いましょう。
2. ユーザー像が把握できていない。
対象となるユーザー像を理解せずにマップを作ることはできません。人口統計データを活用して、どんなユーザーが製品を使用しているかを捉える必要があります。
3. マップにまとまりがない。
ユーザーストーリーマップがごちゃごちゃして見にくく、更新が面倒な場合には、クラウドでホストできるテンプレートを使ってみましょう。
4. 製品の存在意義が分からない。
これは大問題です。その製品で解決できる問題が分からなければ、その解決の道筋を決めるストーリーマップも作りようがありません。
これでユーザーストーリーマップの基本は完璧です!お化け屋敷ほど怖くはないですよね。

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