Nature Communications 発表の2020年の調査によれば、私たちが日々思考する回数は6,000回にも上ります。こうした思考を整理する方法を知っておかないと、思考が散逸し、収拾がつかなくなってしまう可能性があります。
定期的に思考を記録し、整理することで、脳を「再起動」し、キャッシュをクリアして新しいアイデアのためのスペースを用意できるようになります。
この記事では、マインドマップで思考やアイデアを捉え、マインドマップを使ってより創造的な思考と質の高い意思決定を実現する方法をご紹介します。
マインドマップとは?
マインドマップとは、アイデアや思考の流れを、中心となる概念から分岐させる形で視覚的に描写した図です。マインドマップの先駆者であるトニー・ブザン氏によれば、多くのマインドマップには次のような特徴があります。
- 注目すべき対象が中心の主題に結晶化されている。
- 中心的なイメージから、主題の主要なテーマがブランチの形で放射状に広がっている。
- ブランチには、関連する線にキーとなるイメージや言葉が記載され、そこから細部が放射状に広がっている。
- ブランチは連結され、ノード構造を形成する。
中心には、より深く掘り下げたいテーマを配置します。何でもかまいません。例えば、旅行の計画、ビジネスプロセスの改善、効率的な時間管理方法の追求などが考えられます。
思考やアイデアは、キーワードや簡単なフレーズ、画像、色、形などで表現され、 線や矢印でアイデアや主題をつないでいきます。こうしたつながりが、さまざまなアイデア間の関連性を示し、すべてが中心となるアイデアにどうつながっていくかを表します。
マインドマップを作ることで、脳の創造性が解放され、脳が本来情報を処理する方法に近い、非線形な方法で情報を検討することができます。画像や色を線でつなぐことで、カテゴリーや関連性がひと目で把握できるようになり、ビジュアル効果で脳が刺激され、文章主体の文書に比べて、長期的な情報の記憶と取り出しがしやすくなります。
マインドマップを使用する理由
脳には、思考やアイデアを関連する情報と自然に結びつける働きがあり、基本的に私たちは日々頭の中でマインドマップを作り続けています。非線形に情報を処理する方法に慣れているので、ビジュアルという形でマインドマッピングをし、情報の整理や提示に使うのは自然なことです。
マインドマップを試すべき理由は他にもあります。
- ブレインストーミング : ダイナミックで非線形のマインドマップは、ブレインストーミングセッションにも最適です。考えやアイデアを捉え、中心のアイデアの周りに配置していくと、キャンバス上の他のコンセプトとの関連性が見えてきます。すばやく連想することで思考が整理され、よりクリエイティブで適切な解決策やアクションアイテムが出てくるようになります。
- 学習 : 視覚的に情報を表すマインドマップは、見直すにも便利で、情報 をより早く吸収し、複雑な情報を分解するのに適しています。マインドマップというビジュアルを使うことで、長期間知識を記憶し、保持しておくこともしやすくなります。
- 問題解決 : マインドマップはアイデアや課題を違った視点から眺め、全体像に照らして選択肢を分析するのに役立ちます。より創造的に問題解決を試みるのに適しています。
- プレゼンテーション : 情報を整理し、対処すべき課題を絞り込み、マインドマップの形で経営陣やその他のステークホルダーにアイデアをプレゼンすることができます。ビジュアルを取り入れることで、プレゼンが効果的になり、印象に残るようになります。
マインドマップを使うべきタイミング
思考を整理し、創造性を発揮し、アイデアをより明確に理解したい場合には、いつでもマインドマップが役に立ちます。例えばこんな場合に使ってみましょう。
- メモ取り : 会議、研修や授業などのメモを簡単に取りたい場合にも、マインドマップが適しています。箇条書きやアウトラインの形式でノートを取るのが一般的ですが、文章中心のメモでは、異なるアイデア間の関連が見出しづらく、後で見直しにくいのが欠点です。覚えておきたい情報をひと目で見渡せるマインドマップなら、他の人に情報を共有したり、説明するのもスムーズです。
- CX : マインドマップは、顧客体験の概要の把握にも便利です。例えば、新規顧客のアカウントの作成フローを把握したい場合に は、「アカウントの作成」を中心となるアイデアとし、アプリを使用するために必要となる許可、Google や Facebook などのサインインのオプション、クレジットカード情報の入力などを関連情報として追加していきます。こうした情報をマップ化することで、ユーザーアカウント新規作成の難易度を判定しやすくなります。
- 戦略計画 : マインドマップは、過去の業績から集めた情報を視覚的に整理し、ビジョンとミッションステートメントを作成し、目的や目標を特定し、アクションプランを実践する戦略計画のプロセスにも役立ちます。マインドマップにすべての内容を描き出すことで、関係者全員が情報を全体的に把握し、つながりを理解し、目標達成に必要な行動を理解することができます。
マインドマップの種類
マインドマップはどれも互いに似ており、同じ特徴を持っています。ここでは、ビジネスやプライベートでよく使われるマインドマップの種類を紹介します。
参照のためのマインドマップ
ライブラリマインドマップとも呼ばれ、情報を体系に沿って整理するためのものです。参照用のマップでは、さまざまなソースから別々のデータを集め、中心となるアイデアから木のように放射状に広がるカテゴリーへと整理していきます。レポートをまとめ、異なるソースからの情報を一体化するのに役立ちます。
例えば、ソフトウェアライセンスを中心のアイデアとした参照マインドマップは、「使用中のライセンス 数」、「利用可能なライセンス数」、「クライアントコンピューターにインストールされたソフトウェア」、「クラウドからアクセスされたソフトウェア」などの関連情報へと放射状に広がっていきます。
プレゼンテーションのためのマインドマップ
プレゼンでは、箇条書きなど、文章を主体とした線形の静的なスライドを使うのが一般的ですが、この方法では、スライドがそれぞれ独立していて全体的な情報の関連が見えにくい傾向があります。
プレゼンテーションマインドマップでは、「オーディエンスの理解」を中心のテーマに据え、提示するアイデアをチームメンバーやステークホルダーに確実に理解してもらえるよう、全体を構築していきます。こうすることで、すべての要素がどう組み合わせられているかを俯瞰的に見ることができます。
こうしたマップは、ユーザーとの対話や調査から得られたことを共有する必要がある UX デザイナーに最適です。こうした学びをガイドとし、インターフェイスの流れの改善につなげることができます。
計画のためのマインドマップ
その名の通り、イベントやプロジェクトの計画に使うマップで、計画の成果に焦点を当てたものです。
例えば、近々発売予定の製品に関するマインドマップなら、イテレーションの目標、テスト の目的、スケジュール日、リリース基準などを関連情報として含めることができます。
マインドマップのコツ
マインドマップでは、中心となるアイデアにブランチで関連情報を付け足していく他には、特に決まったルールはありません。ただ、ユーザーがぱっと見てデータが何を意味するか理解しやすいマップを作るにはいくつかポイントがあります。
マインドマップを作成する際には、以下の点に気をつけましょう。
- さまざまな色を使う : 関連性、パターンやカテゴリーを認識しやすくなります。また、色を使い分けることで脳に刺激を与え、情報が思い出しやすくなります。
- 単純なキーワードやフレーズを使う : 線上、ボックスや円の中にキーワードを入れ、情報の構造と流れを強調しましょう。鉛筆と紙でマインドマップを描く場合は、キーワードやフレーズを活字体で書くと読みやすくなります (英語の場合)。同様に、メインテーマには大文字、サブテーマには小文字を使うと、マップの階層性がより明確になるでしょう。
- マインドマップソフトウェアやテンプレートを使う : 紙とペンでもマインドマップは描けますが、手書きが苦手な場合や、字が汚くて他の人が読みづらい場合もあるでしょう。Lucidspark には、多数の図形、接続用の線、色、画像、フォントやスタイルが揃っており、クリーンでシンプル、分かりやすいマップを手軽に作ることができます。大部分がすでに作り込まれたテンプレートを使えば、後はデータを追加すればよいのでマインドマップ作成の作業が早くなります。
- 視覚的な要素を多用する : 文章だけでなく、画像や記号を使うと情報を覚えやすくなります。線の長さ、色や太さを変えることで、重要性や関係性を強調しながら異なる概念やアイデアをつなげたり、まとめたりすることができます。
- 創造性を大切に : 想像力を発揮し、思考を自由に遊ばせましょう。創造的なプレゼンテーションは、脳を刺激し、情報を記憶・保持するのに役立ちます。想像力を働かせ、クリエイティブに取り組めば、つまらなそうなタスクも楽しく、ワクワクしながら取り組めるようになるでしょう。
マインドマップの特長は、特別なルールがないことにあります。中央にメインとなるアイデアがありさえすれば、補足情報は自分にとって分かりやすいよう、自由に配置することができます。ただ、マップを使う他のユーザーの視点も考慮するようにしましょう。複数の人と共同作業をする場合は、全員が簡単に理解できる基本的なルールを決めておくのがおすすめです。
