もし、セラピストと定期的に対面で会って話す代わりに、考えや感情、問題をアンケートで回答しなければならないとしたら、効率が大幅に下がるはずです。人間の思いというのは、アンケートで伝えられるほど単純ではありません。これと同様に、製品を設計する際には、それを使う人と話し合う場を持つことが重要です。二択式の質問では得られない貴重な洞察が得られます。
UX インタビューは、ユーザーの感情や動機、製品を選んだ理由などの全体像を把握する上で非常に重要です。こうしたユーザー調査を行うことで、目的に沿って考え抜かれたデザインを実現することができます。ただ、効果的なインタビューができなければ、こうした価値ある洞察を得るのは難しいでしょう。不適切な進め方では、デザイン改善につながるフィードバックを見落とすことになりかねません。
UX ユーザーインタビューが重要な理由、インタビューに適したユーザーを見つける方法、適切なインタビューの進め方を詳しく確認しましょう。
UX のためのユーザーインタビューとは?
UX に関するユーザーインタビューは、デザイン開始前に行うのが最も一般的ですが、開発プロセスのどの段階でも行われます。デザインが辿るべき道筋を予め決めておくことで、後で修正する必要がなくなるため、開発プロセスの最初に実施するのが最も有用です。
開発プロセスが進んだ段階でユーザーインタビューを実施する場合は、ユーザーが気に入っている点やそうでない点、ユーザーにどのような行動が見られるかといったフィードバックを集めることが目 的となります。
UX のためのユーザーインタビューは、通常は UX デザイナー2人と対象ユーザー1人が参加して、リモートか対面で行われます。こうした会話の場を正式に設けることで、定量的なデータがユーザーから直接得られ、製品マネージャーやユーザーエクスペリエンスデザイナーがユーザーの抱える問題点を把握でき、そこを改善して全体的な体験の改善につなげることができます。
ユーザーインタビューとフォーカスグループには主に以下のような違いがあります。
- ユーザーインタビューは1対1で、フォーカスグループはグループ単位で行われる
- フォーカスグループではデザインのプロトタイプを使ってグループのインタラクションを分析し、ユーザーインタビューでは口頭でのフィードバックを収集する
- フォーカスグループはユーザーグループが会話を行うことで影響を及ぼし、コンセンサスを得ることを目指したものであり、ユーザーインタビューは単純に一連の質問と回答から構成される
ユーザー調査のためのユーザーインタビュー実施のヒント
1. 目的を決定する
ユーザーインタビューの前には、製品のステークホルダーと話し合い、明確な目的を設定するようにします。例えば、瞑想アプリを開発している場合であれば、ユーザーが毎日瞑想する上での障壁がわかれば、毎日の使用を効果的に促せるアプリを構築できるでしょう。インタビューの前に必ず、こうした明確で具体的な目標を定めておくようにします。
2. 適切な参加者を見つける
理想的な参加者を見つけるには、現在のユーザーベース を当たるか、ソーシャルメディア経由で参加を募ってみましょう。瞑想アプリの場合なら、現在ヨガやマインドフルネスを実践しているユーザーを探すとよいでしょう。明らかに自社製品を使わなそうな参加者を選んでも、目的の達成に役立つ有用なフィードバックは得られません。
3. 適切な場所を見つける
対面でインタビューを行う際には、ブランド要素がない、プライベートな空間を選び、参加者がリラックスできるよう、快適な座席を用意します。できれば、社外の中立的な場所を選ぶのがよいでしょう。例えば、有名スポーツ用具メーカーのための瞑想アプリを設計しているといった詳細が参加者に分かってしまうと、心からの意見ではなく、聞き手が望むような回答をするよう印象が操作されてしまう可能性があります。
インタビューをリモートで行う場合は、参加者に適切な機器の用意があり、安定したインターネット接続ができることを確認します。インタビュー前に少なくとも一度は連絡を取り、どのリンクをクリックすればいいかを参加者に伝え、カレンダーで招待を送っておきましょう。参加者が忘れないよう、インタビュー当日にテキストメッセージでリマインドするのも効果的です。
ユーザーが時間を割いてくれたことに対し、何らかの対価を提供するのが一般的です。ギフトカード、無料の製品や謝礼金などを用意しておけば、募集もしやすくなります。
4. インタビュー内容を記録する
質問の記録は、質問者とは別の人が行います。質問者は、フォローアップの質問ができるよう、参加者の回答に集中する必要があります。 リモート実施の場合はミーティングを録音し、対面式のインタビューでは別の人 (できれば別の UX デザイナー) がメモを取るようにしましょう。
5. 適切な問いかけをする
ここがユーザーインタビューで最も難しい部分となります。質問内容はインタビュー前に台本として書いておきましょう。長い質問リストを用意しますが、参加者の回答を確認するためにさらに質問が必要となりますので、決められた時間内にすべてを質問するのは難しいはずです。誘導尋問やはい・いいえの二択の質問は避けましょう。また、できる限り中立性と公平性を保つことも大切です。なかなか難しいですが、回答の整合性を保つためには不可欠です。
一般に、質問には以下の4つのカテゴリーがあります。
会話のきっかけ
対象ユーザーをより理解するための質問で、緊張をほぐすためのきっかけともなります。実生活に即した回答を引き出す上でも以下のような質問が役立ちます。
- 今日はどんな一日でしたか?
- どんな趣味をお持ちですか?
- 一日にいくつのアプリを使いますか?
- スマートフォンを何時間使いますか?
- 会社ではどのような役職に就かれていますか?
製品について深堀りする質問
製品やデザインに関連する行動を深く理解できるチャンスです。例えば瞑想アプリの場合なら、こんな質問ができるでしょう。
- 瞑想を始めたきっかけは何ですか?
- 毎日瞑想ができない理由はどのようなものですか?
- なぜ瞑想をするのですか?
製品の機会に関する質問
UX インタビューはデザインを本格的に開始する前に行う可能性が高いので、プロトタイプの用意はないと思いますが、製品を参加者に説明したり、製品のワイヤーフレームやランディングページを示してフィードバックを集めることができます。
- このアイデア・製品について、全般的な印象はいかがですか?
- この製品はどのような人に向けたものだと思いますか?
- この製品やウェブサイトのどこが信頼できそうですか?もっと信頼できるようにするにはどうすればよいと思いますか?
製品への反応に関する質問
ここでは、競合他社の製品やサービスに対する反応を測るため、こうした企業の製品やデザインを参加者に提示し、フィードバックを集めます。以下のような質問をしてみましょう。
- この製品のどこに驚きを感じましたか?
- この製品やアプリを使い続けたいと思いますか?
- この製品について改善や変更すべき点はどこですか?
UX ユーザーインタビューで避けたいこと
インタビューという形式ではありますが、本物の会話のように感じてもらえるよう、他のユーザーや「皆」の意見、感想には触れないようにしましょう。また、どんな形であっても仮定は避け、誠実そうなそぶりを見せるのもやめましょう。共感を装ってもユーザーには見抜かれます。心からの質問ができない場合は、他の人に質問してもらったほうがよいかもしれません。
適切に行えば、UX ユーザーインタビューからは貴重な視点が得られ、製品のデザインを進めるベストな方法が見えてくるはずです。上述のアドバイスを参考に 、有意義で楽しめるユーザーエクスペリエンスの実現に役立つ情報を集めましょう。

ヒントを参考に、Lucidspark で UX に関するユーザーインタビューを実践してみましょう。
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